宮本啓次コーチ/名古屋みなと校スクールマスター
名古屋みなと校に赴任したのが2013年です。スクール近くに名古屋市港サッカー場があり、全国高校総体愛知県代表を決める4校リーグが行われていました。観戦しにいったら、4校中3校に、かつて指導した生徒の名前が入っていたのです。会場で「ひさしぶり」と声をかけ、連絡先をきいたり、SNSで友達になったりしました。中学・高校の試合を見にいくようになると、すこしずつ元生徒とのかかわりが増えていき、いまでは100名くらいとつながりを作れています。
当時、スクールでは、アルバイトのコーチが足りない状況でした。元生徒に「夏休みだけでもやらないか」と声をかけ、協力をあおぎました。それ以来、時期は、ずれますが、合わせて18名が、やってくれました。スクール出身者とつながりを持ったことが、さいわいしましたね。
よろこび
先日、中学2年生から大学4年生の元生徒23名と、いっしょにフットサルを行いました。
メンバー集めは、大変でした。声をかけても、意外に反応が鈍かったです。「ひさしぶりに会って、たのしもうよ」というこちらの熱量とのギャップを感じました。高校、大学に進むと忙しくなる人が多いようです。経った時間が長いほど、そして疎遠になるほど、足が遠のきがちになるのでしょうか。
反対に、卒業して間もない中学2年生は、反応がよかったですね。予定が入っていないかぎりは、声をかけたら来てくれました。つながっているスクール時代の友だちも積極的に誘ってくれました。元生徒全員のメールアドレスを知っているわけではないので、連絡をとれない子もいましたが。
進学や就職で地元をはなれた人が実家に帰ってくる正月に、元生徒とのフットサルを、毎年、やりたいと思っています。
大学生にもなると「本気でやるサッカー」をやめている方がほとんどです。想定内でした。
本気でやるサッカーはやめているけれども、何らかの形で続けてくれていてサッカーを通じてつながれることを、よろこびに感じます。
うれしさ
高卒生
先日、千葉の大学に進学した元生徒と会い、話を聞くと、フィンランドに留学すると言うのです。「スポーツで地域交流をする世の中を作るにはどうすればよいか」を、探求したいと。大学を休学し、文部科学省の留学支援制度を使って、1年間行ってくるとのことです。
彼は大学でも体育会サッカー部に入り、サッカーを続けていましたが、ケガを負い途中であきらめざるをえない状況でした。しかし、サッカーをやめた後のほうが「世界が広がった」と言います。
彼はゴールキーパーでした。高校時代の試合を見にいったとき、最後方から青筋立てて、仲間に指示していました。ちょっと強くあたりすぎじゃないかと、こちらが心配するくらい。小学生のときは、プレー中、あまり声をだすほうではありませんでした。自分が教えていた6年前から、こんなに成長するものかと感じさせられ、うれしかったですね。
おもしろさ
高校生
もうひとり、ゴールキーパーをやっている元生徒から気づかされたことがあります。この子は、もっとおとなしかったです。高校生になり監督から、声をだすように厳しく指導されてから、だせるようになったと話していました。
その話を聞くまで、声をだせないのは、二通りの原因があるという持論がありました。一つ目は、プレーに自信がないタイプ。たとえば、パスを受ける際のコントロールが未熟だったり、受けても、ドリブルができなかったりとかです。この場合は、自信さえつけば自然と声をだせるようになります。二つ目は、声をだすのが単純に苦手なタイプです。Jリーグの下部チームにひき抜かれる実力があっても、ださない子はだしません。
しかし、彼からは「声がだせるようになったら、自信がついた」と、持論とは逆のことをいわれました。
「こういうこともあるのか!」
持論に加え、もうひとつのパターンもあると気づかせてくれました。この点が、元生徒と話をするおもしろさです。
これからのたのしみ
中学生
これまでスクールから生徒を送り出した後のたのしみといえば、高校選手権やインターハイ、年代別代表などで活躍する姿を見ることでした。これからだれがプロ選手になるのかというのもたのしみです。
しかし、フィンランドに留学する元生徒から将来の夢を聞いて、サッカーからはなれた後にどういう人生を送るのかということについても思いをはせるようになりました。
スクールでは生徒たちに、サッカーに限らず自分自身の目標にむかって全力で、努力できる人になってほしいと思って指導しています。今回、話をきいていてこの子はまさにその状態になっていると思いました。
社会にでて、やりたいことに一生懸命な元生徒たちと再会して、ひょっとしたら、いっしょに仕事する可能性もあります。
大学を卒業し、社会人になる人が増える、これからたのしみです。