サッカープレーヤー本人だけでなく育成年代にあたるプレーヤーの保護者の方々も、1度は思い浮かべたことのある問いではないでしょうか? プレーヤーたちのパフォーマンスを高めるためのフットボールシューズ開発に長年携わってきたアディダス ジャパンの山口智久さんに、「正しいスパイクの選び方」を聞きました。本ページでは実際「自分の足に合ったシューズ」を選ぶポイントをQ&A形式でお話いただいた内容を掲載します。
正しいスパイクの選び方(足に合うスパイクを選ぶポイント)
「スパイクは何をどう選べばよいのか?」
―――――「子供たちの足にあったスパイク」の選び方を教えてください。
「自分の足に合う」のは当たり前とした上で、さらに「自分の武器を引き出してくれる」シューズを選ぶようにしてほしいということを声を大にして言わせていただきます。「足に合うか/合わないか」という観点ですが、シューズを購入する前にチェックしていただきたい3つのポイントをお伝えします。購入する際、スポーツ店で試し履きをするときに是非、実践してみてください。
1.シューズが正しい屈曲位置で曲がることを確認する
第一に、人間の足底が曲がる部分(屈曲位置)は1箇所だけであり、同じ位置でシューズも曲がらなければならないということです。正しい屈曲位置とは、基本的に足の幅が一番広い部分です。履いてみたいと思うシューズは見た目のデザインや、あこがれの選手がはいているモデルで選ぶことが多いと思います。好きなシューズを手に取り両手でつま先とかかと部分を挟み込むように押してみます。足の屈曲部で曲がるかをチェックしましょう。
シューズを履く目的を考えてみましょう。ひとつは、外部の衝撃から足を守ること。例えば、肌足だとケガのリスクが高くなることは、容易に想像がつくと思います。もうひとつは、パフォーマンスを最大限に発揮することです。キックするときシューズを履いた方がパワーがでますよね。足の動きに合わせたシューズを選ばないと足の曲がらない位置でシューズが曲がろうとしてしまったり、足に余計な負荷がかかったりします。結果、良いパフォーマンスが出せなくなってしまいます。
2.靴ヒモを緩め足を入れる
足がスムーズに滑り込むぐらいシューズのヒモを全体的に緩め、スパイクに足を入れましょう。時間帯によって人間の足の大きさは変わります。夕方になるにつれて、足はむくんできて大きくなるものです。朝履いた状態のシューズはヒモを結んだまま夕方に履こうとしてもむくんでいるので履けないということがありま す。脱いだり履いたりするときは、必ずヒモを緩めてから行ってください。そのときの足にあった状態でヒモを結び、シューズを足にフィットさせましょう。最近は、シューズのヒモをしっかり結べない子が多く見られます。是非、自分で結べるようになってほしいです。
3.ヒモを結び、立ってつま先の状態を確認する
ヒモを緩め、足を入れたら、かかとをしっかりとあわせてからヒモを結びましょう。必ず立ち上がり、サイズ感を調べます。
体重が足に乗り、足が少し大きくなるのです。座った状態では「ちょうどよく」ても、立つと「きつい」ということはよくあります。
つま先の状態ですが、適度に指の自由が利き、あまりきつ過ぎず、且つ緩すぎないことが重要です。目安として、シューズを履いた状態でつま先を手の指で押したとき、つま先のシューズの上部が中敷まで到達する感触があった場合、そのシューズは「大きい」ということです。サイズが合っている場合、つま先上部を押したら、途中で足の指先にあたり、中敷まで到達する感触はありません。
反対に、きつ過ぎて足の指が動かないと指の力をしっかり使うことができず、パフォーマンスはあがりません。適度に自由が利くことです。注意してほしいのが、「つま先はぴったりです」という子が、実はかかとが余っていて、ブカブカのシューズを履いているケースがあります。結果、プレーするとかかとに重心がかかり、結局、つま先が余りすぎるということが起こります。サイズ感を調べるときは、かかとを合わせてからつま先を確認するというのを徹底していただきたいです。
―――試し履きをしたときに、かかととつま先は合っていても、「自分の足幅が広かったり、甲が高かったりして合わない、きつい」という声を耳にします。
選手たちの足型の計測結果から、導きだされた高さや幅、長さの平均値でシューズのサイズは、構成されています。極端に幅などが合わないということは起こりづらいです。基本はつま先からかかとの長さであわせていただき、どうしてもつま先を余らせないと幅が合わないという場合は、中敷を厚めのタイプに変えるなどの工夫によりサイズ調整もできます。
―――子ども向けと大人向けがありますが、違いは何でしょうか?
子どもの足は、大人に比べ未成熟です。また大人のプレーと、子どものプレーでは足にかかる負荷レベルも、当然違います。こども向けのスパイクは、「足を『やさしく』保護」するようできています。
2000名の日本のジュニア選手の足型の計測データから、ジャパニーズジュニアマイクロフィットラストを開発しました。つま先、甲周り、履き口、足の裏、かかと、土踏まず、足全体360度、ブレず、流れず、しっかりフィットさせる形状が、足ブレやシューズ内でのズレを緩和し、足にやさしくかつパフォーマンスを高めます。アウトソールも足にやさしい最新丸形スタッド23本の丸形スタットを採用し、ボール接地面積とグラウンド接地面積を劇的に向上させ、ボールとグラウンドへの水付きやすくなっています。
大人のシューズに関しては、マイクロフィットと呼び、日本人の足型に合わせ、長さや幅に加え、足の裏や土踏まずもジャストフィットする設計になって います。子ども向けシューズももちろんフィットするようにはなっていますが、子どもは、大人より、土踏まず(アーチ)が発達していません。よって、土踏まずが形成されているという前提で、シューズを作ってしまうと、突き上げを感じてしまうので、少し平らな構造にして、圧迫感が強くならないよう仕上げています。
―――「子供の成長が早く、少しでも長く使えるよう大きめのシューズを買う」とお考えの方が多いかと思いますが、この考え方については、いかがでしょうか?
シューズは消耗品と考えてほしいです。一週間に数日程度しかプレーしない小学生でも、シューズの寿命は、「最大半年」です。部活などで毎日、ハードにプレーする高校生では、「最大3ヶ月」が目安になってきます。実は、身体の成長が著しい子供の足の伸びも、「半年で5mmも伸びない」といわれています。シューズを購入される際、最長5mm余裕があれば、半年間対応できます。スポーツ店で、試し履きをして、指でつま先部分を押して、中敷に当たるか、当たらないかという程度であれば、約5mmは余っていると考えて差し支えないと思います。
―――大きすぎるシューズをはく怖さを教えてください。
「同じ位置にボールをおいて100人に蹴ってもらう」というテストを過去に行ったことがあります。全員が蹴った後の地面を確認すると、ボールの手前の土が、かなりえぐられていました。ボールだけでなく、土をも蹴っていたのです。つま先が地面を蹴っている状態です。そこから土を蹴らないよう、 フォームを修正して、足部を寝かせて蹴ってしまうような、変な蹴り方になってしまう子もいます。キックのフォームに無理やり修正をかけてしまうことと、 「日本人は、外国人選手に比べキック力がなく、飛距離が出ない」といわれていることは、何らかの関係があるのでないかと考えています。ちゃんとしたフォー ムで蹴れば、外国人と同じようなキレイなキックが蹴れるかもしれません。つま先が地面に触れると、ボールに足の力が、きちんと伝わらないだけでなく、シューズに過度な衝撃を与え、シューズの寿命を短くしてしまいます。
大きめのシューズを購入し、長く履き続けるという、経済的なことも大事だとは思います。一方、足に合わないシューズを履くと、ケガをしたり、間違った技術を覚えたりと、上手くなる機会を奪われてしまいます。小・中学生という一番伸びしろがある時期なら尚更、もったいないことです。
繰り返しますが、体の成長が著しい年代でも半年で足の大きさは5mmも伸びないと言われています。正しいサイズを選び、遅くとも消耗期間の半年が経ったら、買い換える。子供のための年間たった2足なので、そこは是非、ご両親にご理解とご協力をお願いしたいと思います。
―――スパイクはプレーが終わったら脱いだほうがよいのですよね?
そのとおりです。スパイクの裏には、スタッドと呼ばれる突起物があります。スタッドがあるほうが、足への突き上げが強いのです。スパイクを長く履けばはくほど、足が疲れてその突き上げや衝撃を感じやすくなります。練習が終わったら、極力、足の裏が平らなシューズに履き替えたほうがよいでしょう。スパイクを履いて、帰宅するのは避けてほしいです。アスファルトやコンクリートの上のほうが突き上げが強いですし、滑りやすく、転んでケガをするリスクもあります。
―――日ごろ履くスパイクの手入れの方法を教えてください。
天然皮革のシューズの手入れは特に大切です。保湿成分を与えなければ、素材がヘタってしまい、壊れやすくなります。
天然皮革の場合
- 1.クリーナーや少し濡れている雑巾で汚れを落とす
- 2.保湿成分が入ったシュークリームをブラシで全体になじませる
- 3.足型を保つためにシューキーパーや新聞紙を入れる
- 4.理想は日陰で24時間は休ませる
人工素材の場合
- 1.湿った布やブラシで汚れを落とす
- 2.足型を保つためにシューキーパーや新聞紙を入れる