今回の指導実践では、低学年向け(U-8)のボールを使ったコーディネーショントレーニングを実施致しました。アメリカの人類学者スキャモンの研究によると、子どもの発育過程における神経系の発達は12歳までに成人とほとんど変わらないレベルにまで成長を遂げることが分かっています。今回のトレーニングメニューを実践し、コーディネーション能力を高めることで、サッカーのパフォーマンス向上とともに、ケガをしにくい体つくりに挑戦してみましょう。
アカデミー
U-8 コーディネーショントレーニング(ボール有り) ~アカデミー研修レポート~
2023.06.21.WED
運動神経は12歳までにほぼ決まる?
アカデミー第24期生
小道 啓太(こみち けいた)
長崎県出身
私は現在、東京都の板橋大山校でスクールコーチをしています。これまで日本、イギリス、韓国でサッカーをしてきましたが、ボール一つで文化や言語、国籍や人種などを越えて通じ合うことができる、本当に夢のあるスポーツだとしみじみ感じる今日このごろを過ごしています。
コーディネーションとは
コーディネーションとは、脳の神経回路と体を繋げる能力のことを言い、サッカーにおける上手な身のこなしを実現するために不可欠な能力です。7つの種類があります。
1.定位能力
自分と動いているものや人との距離を正しく把握する能力
例)サッカーのポジショニング、ボールの落下地点・軌道・高さの把握
2.変換能力
動きを素早く切り替える能力・リアクション動作・敏捷性
例)フェイントへの対応
3.連結能力
さまざまな動作をスムーズにする能力
例)走りながらのトラップやパス
4.識別能力
手足の動きと用具などを、視覚と連携させて使いこなす能力
例)リフティング・ボールマスタリーなど
※連結識別能力トレーニング:ブラジル体操・ラダートレーニング
5.反応能力
外部情報に合わせて目的に合った動作を素早く行う能力
例)ゴールキーパーのセービング、1v1
6.リズム能力
見た動きをまねしたりタイミングやリズムを合わせたりする能力
例)ドリブルのフェイントやステップワーク
7.バランス能力
身体のバランスが崩れたときに、転ばないように体制を保ち素早く戻して倒れないようにする能力です。
例)相手選手との競り合い、ボディバランス
コーディネーション能力の重要性
トレーニング理論では、サッカーにおけるパフォーマンス発揮条件は3つあると言われています。一つ、敏捷性や筋力、持久力、柔軟性といった基礎体力。二つ、サッカーにおけるボールを止める・蹴る・運ぶスキル。そして、もう一つがコーディネーション能力です。基礎体力とスキルを「繋ぐ」重要な働きをします。いくら基礎体力があり、スキルがあったとしても、体の使い方や上手な身のこなし(コーディネーション能力)が身についていなければ、最高のパフォーマンス発揮をすることが非常に難しくなります。逆に言えば、このコーディネーション能力を鍛えることで、培った基礎体力とスキルを最大限発揮することができるということです。
1.リズム運動
1.ソールタップ+両手クラップ
→ソールタップをするたびに、体の前後で交互に手を叩く。
2.ソールタップ(右2左1)+両手クラップ
→ソールタップを右2回左1回の3のリズムで行う。その際も、手は2のリズムで前後で叩く。
このトレーニングは、ソールタップで太ももを引き上げる運動をしつつ、頭の運動もできる一石二鳥のメニューです。一見簡単そうに見えますが、やってみると意外とできません笑
実際、見本として私も実践しましたが、緊張もあってか2回ほど失敗しました。子どもたちがやる際には異常な盛り上がりを見せることもある非常に楽しいメニューなので、ウォーミングアップでやってみてはいかがでしょうか。
養えるコーディネーション能力:リズム能力、連結能力、識別能力、バランス能力
2.シャドートレーニング
・2人1組を作り、先手と後手を決める。
・先手がドリブルし、後手がそれを真似してついていく。
・15秒ほど行なったら、役割交代。
このトレーニングでは、相手のドリブルに合わせて自分も同じ動きをしなければならないため、反射神経に刺激を入れることができます。同じ動作だけではなく、スピード感やリズム感など、細部まで真似をするようにも促せるため、いくらでも要求レベルを上げることができます。
養えるコーディネーション能力:識別能力、反応能力
3.鬼ごっこ
・20m四方コート内で1人1個ボールを持って、ドリブルしながら逃げる。
・鬼はビブスを手に持ち、逃げる人のボールをビブスでタッチする。
・タッチされたらコート外で15回ソールタップをしたら復活できる。
このメニューは子どもたちにも大人気です。ここでは、定位能力(自分と動いているものや人との距離を正しく把握する能力)と変換能力(動きを素早く切り替える能力・リアクション動作・敏捷性)を養うことが目的です。また、迫りくる鬼の位置を常に確認し、ドリブルをしながら逃げるため、ボールコントロールスキルと顔を上げる習慣が自然と身につきます。
養えるコーディネーション能力:定位能力、変換能力
4.サーキットトレーニング
・グリッド内でトータップ5回、ソールタップ5回
・コーン間はもも上げで前進
・シュートライン手前からボールを蹴ってコーンに当てる
最後に、様々な種目を用いた競争ゲームを行いました。1〜3で行った種目に
再度挑戦するため、選手達の頭も体も動きに慣れた状態だったのですが、3人ずつで競争することによって、よりテンポアップした見どころの多いセッションとなりました。また、コーンやマーカーの配置を工夫することで、選手たちがワクワクするようなトレーニングが出来上がりました。このように、動作をただ反復するのではなく、動きを複雑化させ、そこにスピードを求めることで、頭と体により多くの刺激を与えることができます。
養えるコーディネーション能力:定位能力、変換能力、反応能力
成長期の今が、運動神経を養う最も重要な時期
コーディネーション能力は、子どもの傷害予防に効果があるだけではなく、サッカーのスキルを最大限発揮するためにも重要な役割を果たします。神経系の発達が最も見られる5歳から12歳までのゴールデンエイジに、コーディネーショントレーニングを積極的に取り入れ、成長に役立てられたらと心から願っています。
今回はボールを使ったコーディネーショントレーニングを行いました。サッカーが大好きな子どもたちにとっては、ボールを使わないトレーニングよりもボールを使ったものの方がやる気と向上心が湧くものです。明日からすぐにでも実施できるメニューになっていますので、ぜひチャレンジしてみてください!
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